胎動(仮)
「原案」
杉本
清水
たかし
荘
北澤
「シナリオ」
北澤
【登場人物】
ミコト・・・日本人女性に擬態している宇宙人(ゴジラ並のパワーを持つ、のちに覚醒)
サナ・・・日本人女性に擬態している宇宙人(ゴジラ並のパワーを持つ、のちに覚醒)
小田島シンジ・・・自主映画監督の青年
君島 聡子・・・カメラウーマン(秘密警察)
佐方 咲・・・DJ 録音部 金井の彼女
小田島浩二・・・小田島の父(思想集団Zの創出者)
中山和明・・・友の党党首(元思想集団Z)
香川俊夫・・・創出の会党首(元思想集団Z)
金井・・・小田島の友人、宇宙や未知のことについてすこぶる敏感
輝男・・・映画の役者に応募してくる(宇宙人)
木暮早苗・・・映画の役者に応募してくる
堂島良・・・映画の役者に応募してくる
坂本・・・謎の組織の日本支部の長
功・・・坂本の右腕
和枝・・・謎の組織の組員、中山と不倫関係にあり、宇宙人の情報を中山に流す
友子・・・謎の組織の組員
春香・・・オーディションに来た女優
あゆみ・・・春香の友達
徳子・・・春香の友達
1 小田島の家
小田島が帰ってくる。
郵便受けを確かめ、一通の封筒を手に取り、まじまじと見つめる
封筒には「警視庁○○警察署 刑事課」の文字
2 小田島の家(夜)
アパートメントの部屋の中、小田島が部屋に入ってきて押入れの中からたくさんの古いダンボールを貪り出す。その中からある一つの箱を取り出す。資料には「思想団体Z」という張り紙が貼ってある。それは小田島の父が探りためた宇宙人に対しての資料である。現在の政治家「自由の党」の「中山」、「創出の会」の「香川」の名前も書かれていた。その中の1枚の写真に目が止まる。中山と香川と小田島父が仲良く写ってる写真。
3 小田島の部屋
小田島、部屋の中で一人佇んでいる。神妙な顔つきで何かを考えている様子。
4 小田島(回想)
・リビングで両親と向かい合っている幼少期の小田島(5歳)
・両親に連れられ、タクシーに乗る幼少期・小田島。
・「おじさん」という人預けられた小田島。学校にも行かず、17年間監禁生活をする。行動は家の中のみに制限され、唯一、許されていた読書は、教団の思想本、歴史書、映画の本。10歳に、パソコンでのインターネットで自分が異常な監禁生活をしていることに気づく。パソコンに映った青年(現在の金井)に出会い、逃亡のきっかけを見出す。
・17歳の頃、おじさんから少しづつ盗んだコインを元手に、逃げ出す。町、森、公園、県境の標識…恐怖のあまり、何処をどう逃げたのか、その部分が記憶喪失になる。
映画タイトル「胎動」
5 人の気配のない郊外 (夜)
・木々が風で揺れている。電灯がチカチカしている
・水が蛇口から滴り落ちている。其れが段々青い液体人なりだんだんそれが広がっていく。
・ミコトとサナが現れる。しばらくキョロキョロ見渡したあと街の中に消えていく。ミコトとサナが人々を俯瞰してみている。
・街中を歩く。
・ある家を通ると映画を見ている風景(西部戦線異常なし)が目に入る。 二人の中に不思議な感覚があらわれる。青い液体が体から垂れている。
6 桟橋 埠頭
遠くの方に軍艦島がかすかに見える。小田島が桟橋でその島を見ている。隣に香川がすっと立つ。びっくりする小田島。
香川、小田島の顔をチラリと見る。
香川 「似てるな。やはり血は争えないか。眉間のあたりなんかそっくりです。性格は(またチラリを見て)まだわかりませんが」
小田島「あなたが手紙を送ってくれた方ですか?」
香川 「はい」
小田島「今更親父のことでとやかく言われても。せっかく忘れかけたところだったのに」
香川 「私もコンタクトを取る気はありませんでした。つい最近までは」
小田島「じゃあなぜ?」
間
香川 「そういう事態になってしまった、というのがふさわしい言葉ですか。」
小田島「?」
香川 「お父さんの資料は読みましたか?」
小田島「思想団体Z?」
香川 「ええ」
小田島「肝心なところは残ってませんでした。断片的にしか。あなたの写真は出てきましたよ。活動を共にしてたんですか?」
香川 「ええ。同志でした。」
小田島「一体何がどうなってるのか、さっぱり、監禁された思い出しか残ってないんです」
香川 「監禁ではなく守ったんでよ。お父さんは命がけで守ったんですよ。あなたを」
小田島「守った?」
船が現れる。桟橋に到着する。
香川 「詳しいことはこれから起こることのあなたの選択にかかってます。私が何を行っても信じないと思いますので」
二人船に乗り込む。1時間くらい船に揺られ船がゆっくり監獄島に辿り着く。二人は船から降りて山の中に入っていく。やがてある洞穴に辿り着く。入り口に老人が座っている。香川を見るとアゴで中にいるていの合図をする。懐中電灯を照らした先に小田嶋の父が座っている。小田嶋の父と息子の目が合う。20年ぶりである。
小田島浩二「大きくなったな」
小田島は父から少し離れたところに座る。
香川 「時間がない10分だ」
浩二 「ああ。まだ憎んでるか?」
シンジ「……」
浩二 「憎しみは憎しみを呼ぶ、負の連鎖をな。しょうがなかった。」
シンジ「何行ってんだよ、お前に俺の気持ちがわかるのか、普通の生活でよかったんだよ。普通の生活がしたかったんだよ。俺は。」
浩二「時間がない。詳しいことはこのおじさんに聞け。」
シンジ「おじさん?じゃあお前が!」
浩二 「いいか、俺たちは最善を尽くして戦っている。お前はもう大人だから自分で責任を取れ。目の前のことにどう判断を下すかはお前次第だ。」
香川が出てくる
香川 「中山が存在と力を合わせてどんどん力をつけてる。奴らの研究所からあいつらが逃げ出した。」
浩二の顔が歪む
香川 「もう時間がないぞ。いいのか?言わなくて」
浩二 「考えが変わった。……シンジが自分で判断すればいい」
香川 「いいのか?それで?」
浩二 頷く。
香川 「……わかった」
香川、シンジに
香川「もう時間がない、何か言う事はないか?」
シンジ、少し考えて
シンジ「いや、何も」
香川とシンジが出ていこうとする
浩二 「シンジ!」
シンジ振り返る
浩二 「見たいものだけを見るな!」
香川とシンジ出ていく。山の中を二人帰る。
シンジ「見たいものだけを見るな、か。意味わかんねー」
香川 「俺は親父さんの意思を尊重するよ。自分で考えるんだな。」
7 壇上
中山の顔だけ浮かび上がっている。中山が壇上で演説をしている。
中山 「世界を見渡して見て下さい。未だ嘗て戦争や争いが地球上で途切れたことがあったでしょうか?核の脅威にも常にさらされている状態です。戦争や争いは人類にとって必要悪だと考えます。逆に言えば人類は争いをせざるを得ない人種なのです。この激動の世界を日本はどのように生き残っていけば良いのでしょうか?
世界が緊急事態の今、日本だけ鎖国のような武器小国ではいけない。自国を守り、諸外国の危機に積極的に関与しなければ今後日本は世界の流れから取り残されてしまう。またいつの時代も戦争は文明を推し進めてきました。またそれは科学文明を推し進める唯一の方法であります。
自衛力を強化して科学文明に寄与する道こそ日本が進むべき道ではないでしょうか!」
壇上から下を見ると香川が不満そうな顔で見ている姿が浮かぶ
8 自由の会の会議室
村瀬 畑中 中山がわになってしゃべっている。
畑中 「傑作な演説でしたな」
村瀬 「本当に、みんなあっけにとられてましたよ」
中山 「まあ、今の時代なあなあに言ってもね、支持してもらえないじゃないですか。はっきり主張しないと。力と権威をつけたものが勝つ世の中です。」
村瀬 「順調にきてますね、ここまでは。」
畑中 「今のところ対抗勢力は……」
中山 「創出の会」
村瀬 「香川のところですか?」
畑中 「毎度毎度面倒なやっちゃなー周辺あらいますか?」
村瀬 「クリーンなイメージで通ってる香川ですからね。効果大ですね」
中山 「女性関係……女関係洗っといてくれ、特に売春がらみ、不倫がらみを重点にな。リーク出来そうなところを徹底的に。」
9 高級料亭店 夜
中山と和枝が親しそうに会話をしている
中山 「久しぶりだな」
和枝 「ええ、あなたも。色々面白い動きがあったようね。」
中山 「ああ」
中山、しばし肉を切っている
中山 「自衛隊の改正法案は通りそうだな、軍事予算も上がってきてる。でもあんた達に言わせたら子供のおもちゃだろ」
和枝 「ふん、でも頑張ってるわよ、地球防衛軍も(笑)」
中山 「余裕だな」
二人食事を続けている
中山 「今日はでもなんかあるんだろ、お前から呼び出すなんて滅多にないからな」
和枝 「ええ、AH-78,AH-81の存在は知ってるわよね」
中山 「ああ。お前達が独自に進めていた開発兵器だろ。」
和枝 「ええ。」
中山 「それがどうした?」
和枝 「逃げ出したわ」
中山 「え?逃げ出すとどうなる?」
和枝 「わからないわ、ただまだ外部の接触に慣れてないから戸惑うと思うけど……秘めてる力はものすごいわ」
中山 「お前達がすごいと言うのなら」
和枝 「ええ、地球なんか一瞬で消す能力を秘めてる」
中山、 食事を中断して黙り込む。
中山 「いまどこにいる?」
和枝 「必死になって探してる。協力して。」
中山 「ああ」
中山はおもむろに和枝の手を握る。
食事の後繁華街に出てホテルに入っていく2人。
10 倉庫
「フューダ(全知全能の神)青い色の光。」を取り囲んで座っている。坂本、功、和枝、友子が会議をしている。
壁には(ザーとした画面)が写っている。一度目をつむってAH-78,AH-81の行方を探っている。
坂本 「見えたな」
功 「はい」
友子 「オーディション会場に潜り込みましたね」
功 「戦争映画に反応してエネルギーが高まってる。」
和枝 「まずいわ」
坂本 「まだ実験中だからな、俺たちもどれくらいのパワーがるのかはかりしれる」
友子 「飽和点を超えたらどうなるか?」
坂本「何とかしてその前に抑えないと取り返しのつかないことになる。誰か飛んでくれるか?」
一同を見渡す
和枝 「私が行くわ」
功 「私も行きます」
11 体育館 昼 「このシーンは役者さんの個性に基づき現場で作っていく」
ライブフィルム撮影現場(リハーサル)。小田島シンジ、輝男、木暮早苗、堂島良、君島が集まっている。君島は外で電話をしている。佐方咲(録音)と金井が外でタバコを吸っている。ミコトとサナがフラフラ入ってくる。
咲 「おはようございます」
ミコトとサナは無視して通り過ぎる。金井と咲は不審そうに顔を見合わせる。ミコトとサナは中に入って行く。
シンジ「遅い!」
ミコトとサナいにかんせず椅子を出してきて座る。
金井 「はい、それではライブフィルムのリハーサルを始めたいと思います。それでは各々自己紹介を軽くお願いします、」
小暮 「小暮早苗です。お芝居は劇団で始めました。今はフリーの役者で事務所に入って活動しています。よろしくお願いします。」
堂島 「堂島良です。芝居の経験はありませんが小田島さんの作品をネットで見て興味をもちオーディションに参加しました。よろしくお願いします。」
輝男 「輝男です。一応芝居はやってました。よろしくです」
ミコトとサナ、うろうろしてたが立ち止まって
ミコト「ミコトです」
サナ 「サナです」
金井 「それだけ?」
ミコトとサナ、無視してキョロキョロしている。君島ミコトとサナをチラ見してメモを取っている。
佐方 「音声のさかたです。よろしくお願いします」
君島 「カメラの君島です。よろしくお願いします。」
金井 「助監督の金井です。よろしくお願いします」
小田島「はい!監督の小田島です。時間がないからぱっぱと行くよ!自分の映画でやりたいのは戦争と暴力です。戦争と暴力はなぜ地球に存在しているのか?なくならないのか?なくならないのならなぜ存在しているのか?この映画で皆さんと一緒に考えて行きたいと思ってます。」
小田島「はい、じゃまずこれ見て」
工場の出口をみんなで見る。
小田島「何が見えた?何が見えて何が見えない?」
一同 「……」
小田島「当てないよ!自分から踏み出して!人生と同じやから。自分から踏み出さないと誰も助けてくれない!」
堂島手をあげる。
小田島「手はあげなくていい!学校じゃないんだから、堂島、何?」
堂島 「人が見えました。(間) 人が動いてます。」
小田島「他に」
小暮 「えーと、馬も動いてます」
小田島「他には」
輝男 「これは全部演出されてます。馬、馬車、人、出てくるタイミング。
そして固定カメラですね。カメラのポジションもちゃんと考えられています。」
小田島「これは最初の映画と言われてるね。ここは正解探しをするところじゃないからね。なぜこれが世界最初の映画って言われてるのかみんな考えて見て」
ミコトとサナ、キョロキョロしている。
堂島 「あのーすいません。いつ撮影するんですか?っていうかリハーサルですよね。」
小田島「もうやってるよ。はい、じゃあ次、演劇と映画の違いは何?」
小暮「はいはい!」
小田島「はい、は一回でいいんだよ!」
小暮 「舞台か映像かの違いです」
堂島 「舞台はお金にならないって聞いたな。映像はお金になるからみんな映像の方に行くんだって」
小暮 「映像だってたかが知れてるわよ!みんな主役が持っていくんだから、ってそれ誰情報?」
堂島 「いや、誰っていうかそう言われてるというだけで」
小暮 「適当なこと言わないでよ、そんな」
輝男 「カメラがあるかないか。」
堂島と小暮、一斉に輝男を見る。
輝男 「演劇と映画の違いはカメラがあるかないか。です。」
小田島「はい、これも正解ないよ、みんな各人で考えて、考えることが大事だ。それが力になる」
小田島「じゃあ次」
金井 「あっちょっと、小田島、飛ばしすぎじゃん?ちょっと休憩いれようぜ」
小田島、みんなを見て
小田島「みんな疲れた?」
一同 「……」
小田島「しょうがないな、はい、じゃちょっと休憩」
金井、小田島に水を差し出し
金井 「ミコトとサナ大丈夫か?なんか変だけど」
小田島「大丈夫だろ、そのうち本気を出すと思うよ」
各々休憩している。君島は相変わらずミコトとサナをチラ見してメモを取り外に電話しに行く。電話の相手は香川。
君島 「はい、今の所大きな動きは。落ち着かない感じはありますけど。はい、引き続き監視します」
君島中に入ってくる
小田島「はい。次テキストやるよ。東京物語 S164」
金井、テキストを配る
「テキスト」東京物語S164
小田島「はい、じゃあやりたい人前に出て来て」
小暮と堂島が出て来てやってみる
小田島「これはどう言う状況ですか?」
小田島「じゃあそう言う状況にもうすでにある、と言うことだよね。それをどう表現する?」
小田島「役者が使え乗るは何?声、体、感情、」
小田島「じゃあそれをやって見て」
小田島「じゃあつぎなるべく動いてみようか」
小田島「じゃあ次なるべく動かないでやってみて」
小田島「はい、オッケーじゃあ次の人どうぞ。」
輝男がすごすごと出てくるがミコトとサナは上の空。小田島しばらく様子を見て。
小田島「はい、じゃあ次の課題に行こうか」
輝男、すごすごと自分の席に戻る
小田島「じゃあ次、西部戦線異常なし」
金井、テキストを配る
小田島「じゃあ読んでみるよ、順番に行こうか」
ミコトとサナのところに行くと詰まるので次の人のところにたまらず進む。
「テキスト1」西部戦線異常なし
『諸君我々がなすべきことがある
全力を尽くし総力を上げて今年中に勝利を手に入れるのだ。こんなことはもうこれ以上言いたくない。若い諸君はわが祖国の生命だ。職員はドイツの鉄の民だ。輝かしい英雄だ。召集に応じて敵を討つのだ。将軍を立ち上がらせて戦場に送るのは私の訳ではない。だが諸君はどう考えているんだ。ある学校であったことだ 。生徒たちが教室で立ち上がって大挙応召(たいきょおうしょう)した 。そんなことがここで起これば私は諸君を大いにほこりに思う。
あるいは誰かが言う。諸君はまだ無理だろうと。まだ若くて家庭がある。両親から引き離すべきではない。しょくんの父は祖国が滅びても息子を救いたいと思うだろうが、 諸君の母は気が弱く 祖国を守る息子を戦場に送り出さぬだろうが、若者が出征するのはいけないことか。
軍服を着る名誉を捨てても良いのか。若い娘に賛美されるのが恥ずかしいのか。諸君は英雄の言葉は聞きたくあるまい。私も言いたくない。立派なものになる道を探してきたはずだ。戦場で大事なのは軽蔑されないことだ。戦争はすぐ終わる。死者もわずかだろう。死者は出る。ラテン語の言葉を思い出そう。多くのローマ兵が異国の戦場でこう言った。諸国に準ずるのは麗しき名誉なり。夢もあるだろう。作家志望の青年を知っている。彼が書き始めた悲劇は傑作になるだろう。彼の夢は第二のゲーテだ。実現するだろうが祖国が呼んでいる。 勇士を求めている。個人的野心はひとまずおいて諸国に身を捧げなければならない。 諸君にとって栄光の生涯が始まる。 戦場が諸君を呼んでいる。我々はなぜ立たないのか。クロップ、なぜここにいる? ムラー、国が君を必要としている。みんな級長を見ているね。 私も見るよ。ポールバウマー 、君はどうするつもりだ。』
小田島「はい、これはどう言う状況?なぜ彼はこのセリフを言ってるの?」
小暮 「長いセリフ」
堂島 「力説してるな」
輝男 「戦争中の緊迫した感じがよく出ています。先生の生徒に向けての言葉かな」
ミコト「戦争?」
サナ「映画」
小田島「何かある?」
ミコトとサナは黙ってい
小田島「はい、また西部戦線異常なしからテキストの抜粋だよ」
金井、テキストを配る。
「テキスト2」西部戦線異常なし」
『先生「ちょうど良いところへ戻ってきた。私が今話したように 最初に出て行った一人だ。 私の目の前に腰を掛けていたが 戦争が始まった年に志願したのだ 。ドイツを戦場で無敵にした鉄の若者の一人だ。
見たまえ 逞しく目が輝いている 。しょくんの誰もが羨望する軍人だ。 話してくれ 祖国に尽くすことの意義をだ。」
ポール「何も言えません」
先生「一言でもいい 祖国が彼らを求めていることを。君がなぜ志願したか。」
ポール「何も言えません。」
先生「 君は勇敢に戦っただろう。その経緯を話してくれ 」
ポール「何も話すことはない。我々は壕で暮らして殺されまいと努めている。 時には殺される。それだけだ。」
先生「違うだろーポール。」
ポール「これが事実です。」
先生「だがそれが戦争ではない」
ポール「先生は昔も同じことを言った。また若い英雄を作ろうとしている。祖国に殉ずることを美しいと思っている。我々もそう思ったが最初の砲撃で目が覚めた。戦争は汚くて苦しい。国のためになど死んではいけない。何百万人が国のために無駄に死んでいる。先生は彼らを行かせたんだ。君たちに死ねと言う。だが死ねというのは死ぬことより優しい」
生徒 「卑怯者」
ポール「それも口で言うのは優しい」
先生「ポール、君は・・・」
ポール「先生には言ってもわからない。我々がここから出てって数年だ。 世間も目が覚めた頃だと思った。赤ん坊を送っても一週間ももたない。 帰るんじゃなかった。 前線では生きるか死ぬかだ 。誰も騙されはしない。 我々が負けたことを誰でも知っている。もう3年・・4年になる。 毎日毎晩負け続けている。 肉体は土で心はどろだ。いつも死が迫っている。 こんなことで勝てるはずはない。帰るんじゃなかった。明日戻る。まだ四日あるがここにいたくない 。」』
小田島「はい、これはどう言う状況?」
役者 「
小田島「状況が今度変わったよね、生徒は実際に戦場に行って来た、明らかに行く前と彼自身の状態は変わったよね。変わってないのは?・・・そう先生と生徒だよね」
役者 「
小田島「そうすると演じる側とすればその違いを見せなければいけないわけだ。全てが違うよね。どんな体の変化がある?どんな声?どんな状態?前とどう違う?」
小田島「じゃあ次、戦争シーン、じゃあ参考にこれ見て、」
西部戦線異常なしの戦闘シーンを見せる、しばらく見ていたがミコトとサナがだんだん、うろうろし始める。
小田島「なんだ、演じたくなってた?じゃあ仮想で後ろから襲うシーンをやってみようか」
和枝と功が突然現れて映像を止める。ミコトとサナが輝男を後ろから襲う。ひきづって外に出す。
小田島「なんだ?まだだよ!」
倒れている輝男。口から青い血。
金井 「おい、大丈夫か、おい」
君島が真っ先に駆けつけ脈をとる。小田島訝しげに君島を見る。小田島、金井、堂島、小暮、和枝と功がミコトとサナを追う。途中に堂島と小暮の死体を発見する。
和枝・功「遅かったか……」
11 居酒屋
はるかが居酒屋で友人達と話をしている。
はるか 「いや、それでね、やる気満々で行ったわけ。そしたら、なんか変に偉そうなわけ。偉くもないのに勘違い人間いるじゃん?」
あゆみ 「あーいるいる?そう言う勘違いバカ!」
徳子 「世界がせまいの。もっと認められてから言えっつうの」
あゆみ 「ねーそもそもその監督自主映画しかとったことないんでしょ?」
はるか 「そうみたいよ。でも俺はすごいことやってるんだ的な感じ満々!それで映画とかよく見るの?的なこと聞かれたから。ハッタリかましたわけ。もちろん週に2、3回はみます。的な、ね。」
あゆみ 「やるね、それでそれで?」
はるか「やばいことに日本映画とかよく見ますか?とツッコミ入れられちゃって……」
ミコトとサナが突然現れる。皆んなは気づかない。みんなの話をジーと聞いている。
徳子 「それで?」
はるか「もちろん、よく見ます、的な。そしたらしつこくオズも見ますかっていうから。行ってやったわよ。オズの魔法使いのことですか?て。」
あゆみ「やったやん!」
はるか「そしたらなんか渋い顔されちゃって〜」
徳子「えーなんでーオズの魔法使い、おもしろいじゃない。」
あゆみ「ねー」
ミコトとサナやがてその場から消える
12 道場 昼
はるかが殺陣の稽古をみんなとしている。ミコトサナが突然現れる。一人を吹き飛ばす。その後みんな吹き飛ばされた後、、ミコトとサナは佇む。ミコトは一言呟く、目から青い涙。
ミコト「戦争……」